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基本ボツネタではありますが、なかなか物語の核心に触れている可能性がありますので、閲覧は自己責任でお願いいたします(あと、内容がかなりブラックです)^^;



「あなたも幸せにならねばならない」
そう諭した当人が、彼を永遠の闇の底に突き落とした。
自分ひとりが光を得るため。

「お前は人を愛してはいけない。その人も、お前自身も不幸になるから」
神による残酷な宣告が下される。
愛は原初より終末に至るまで、人間になくてはならないものだ。
まして彼は、人を愛する事を生きがいとしていた。
生きがいを否定するという、何よりも残酷な宣告に対し、首を縦に振る事ができる者が、いったいどれほど存在するだろうか。
もちろん彼も、首を縦には振らなかった。
振れるわけがないのだ。
その宣告を受け入れる事は、生きる希望を失う事を意味するのだから。
しかし、彼はついにその宣告を受け入れた。
否、受け入れざるをえなかったのだ。
どんなに不条理で、理不尽な内容でも、受け入れるほかなくなってしまう――人は、それを絶望と呼ぶのだ。

「そんな神様、ニセモノに決まってる。信じてはいけない」
そう諭した当人が、神の宣告の正しさを証明してみせた。
それも考えうる限り、もっとも残酷な方法で。
彼が生命よりも大切にしていた、「愛」という感情そのものを否定する事によって。

その時、彼は死の闇に墜ちた。
彼女は、彼が生きている事を望んだ。
しかし、彼女が心配したのは彼の安否ではなく、「彼の死が自分の罪によるものか」という事だった。
裏を返せば、彼の死が彼女の手によるものでなければ、彼の安否など、まったくどうでもいい事だったのである。
ただ彼女は、自分が悪者になりたくないだけだった。
自分のせいでさえなければ、他人がどうなろうがかまわなかった。

彼女は今日も何事もなく、人々に愛を、希望を、光を説く。
だが、彼女自身の「光」は、誰よりも光を信じたものを、闇に追い込んで得たものだった。
それだけではない。愛を裏切り、希望を砕き、光を奪った女だった。
彼女には、何ひとつ語る資格などない。

「闇を払えば光が見える」

彼女は本当の闇を知らない。
払う事のできない、黒よりも黒い漆黒の闇を知らない。
闇を解しない者が、闇を語る事などできはしないのだ。
他人を闇に墜として光を得た者が、光を語る事などできはしないのだ。

「生きるって何? 心臓が動いているという事? 生きるとは、明日に希望がある事ではないの?」

英語でlifeという言葉……これには、「生命」「生活」「人生」という意味がある。
ひとつの単語に複数の意味があると考えるのは、誤りである。
これらは、すべて同じものなのだ。
希望があるから人は生きていく事ができ、生活ができ、人生があるのだ。
希望を奪うという事は、lifeを奪うという事なのだ。
「lifeを奪うという事は、もう生きていけないと言う事。それって立派な殺人罪じゃないの? それとも、心臓が動いてさえいれば、どんなに人を地獄に墜としても、罪にはならないの? じゃあ僕も、同じ事をするよ? 心臓が動いていれば問題ないというなら、心臓を止めないように殺してやる。心臓を止めないように、僕が墜とされたのと同じ場所へ、あの女も引きずりこんでやる」

彼は知った。
世界でもっとも残酷なもの――それは、世界のどこにも希望がないという「事実」ではなく、その事実を無根拠に否定し、中途半端に希望を与え、その希望を改めて奪う事なのだと。
「ユルサナイ」
彼はつぶやく。小さく、しかし、はっきりと。
地獄の底から響くような憎悪をたたえて。
「結局、自分さえよければ、みんなそれでいいんだ。自分が光を得るために、他人を闇に突き落とす事など、ためらいもしないんだ。どんなに誰かのために、愛のために生きていても、慰みなどありはしない。この世界は、優しい人間に甘くない。優しい人間につけ込み、踏みつけ、奪う人間しか存在しないんだ。自分は、生まれてきてはいけない人間だった。ならばせめて自分と同じ、生まれてきてはいけなかった人間を、みんな道連れにしてやる……!」
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